Beyond MDGs Japan

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2013/03/06

明治学院大学社会学部
社会福祉学科 明石ゼミ生

タイトル:MDGsをわかりやすく~より多くの人の協力を得る為に~

私たちは、MDGsが一般市民にも分かりやすくなるべきだと考える。
なぜならば、現状のMDGsは、最新版の関連データが英語しかないことや、問題解決の為にどのような支援が必要であるかなど、私たちに出来る事が明確に示されていない。その為に、支援者以外の一般人が興味を持つきっかけに出会いにくく、個人や企業の協力を得ることが難しい。現在でも、絵本や冊子の出版、関連イベントが行われているが、広まっていないのが現状にある。生活に身近なところで認知度を上げるべきであり、広まればエコ活動のように協力する人や企業も増えると考える。
財団法人国際協力推進会の調査結果では、日本においてMDGsの認知度がわずか3.7%しかない。 20~69歳の男女943人 を対象としたワールド・ビジョン・ジャパン調査のアンケート結果では、関心がある と回答した人は70%以上にものぼる。つまり、問題について知る機会がないことがある 。

<提案>
以上のような背景より、私達は以下のような具体策を提案する。
運営する事務局を設置し、関連団体と連携を取りながら行う。
1)MDGsの日本語版かつ解説のついたものを各関連団体のホームページに挙げる。
⇒学生の発表や研究に使いやすくなり、認知度があがる。また、それをきっかけに関心を持った学生がボランティア活動や団体立ち上げを行う可能性が上がる。
2)MDGsの目的や目標達成のための支援策などが簡単にまとめられたホームページを作成する。
参考例)http://www.hungerfree.net/special/31_1.html
⇒市民が「MDGs」というワードに触れる機会に出会い、調べた時に、関心を持ちやすくする。
3)現在も行われているが、 絵本や冊子の作成を、市民を巻き込んで行い、作成したものは、企業を通じて大々的に宣伝活動を行う。
⇒携わった関係者の間でMDGsが“他人事”ではなく、“自分事”と感じるようになる。
4)コマーシャルをつくり、「世界の課題の現状」「MDGsを掲げて取り組んでいる事」「市民ができること」を発信する。
⇒“MDGs”というワードが知れ渡り、より多くの人にきっかけを提供できる。
5)MDGsに関連した商品の販売(エコバックのようなものを作る等)
売り上げの一部は寄付し、残りは販売企業の収益にする(←商品開発の担い手を確保する)。まずは日本でモデル型をつくる。
加えて、 MDGsの課題を知ることができ、商品にも触れることができるイベントを開催する。
⇒商品やイベントへの興味に、「社会にちょっと良い事をする」という+αを付け加えることで、普段なかなか社会課題に関心を持たない人達にきっかけを提供することができる。
6)グッズ販売に伴い、ファッション系やビジネス系などの雑誌 やフリーマガジンに掲載する。
例)R25(フリーマガジン)http://r25.yahoo.co.jp/
⇒コマーシャルやイベントよりも、詳細を知らせる事が出来る。また、雑誌の種類によっては、年代に合わせた口語的な言葉でも解説する事ができる。
7)また、教科書に、挙げられている社会の問題への取り組み例としてMDGsの例を加える。また、総合の学習の時間を用いて、MDGsに挙げられている課題について議論する時間を設けるなど、義務教育から組み込むことによって若い人々の認知度も広がると考える。

世界で課題を改善していく為に具体的な目標を設定したMDGsは、世界規模で意識を変える重要な要素であると思う。だからこそ継続するとともに、広く一般市民にも認知させ、より多くの人の日常での行動を変える事も念頭に置いて欲しい。

◎明石ゼミ10sw生
阿部田崇、金佳仁、佐川遼、品田瑠美、柴垣嘉徳、鈴木颯、藤川彩、三輪玲菜、本山葵

2013/02/25

明治学院大学社会学部
社会福祉学科 明石ゼミ生

タイトル:Beyond MDGs Japanに向けて、障害児・者のカテゴリーがないのはなぜか。

 <背景>
 世界保健機関(WHO)と世界銀行の『障害に関する世界報告書(World Report on Disability)』(2011年)によると、2010年の統計で世界人口の15%、約10億人が心身になんらかの障害を抱えていると推定され、そのうち1億1,000万~1億9,000万人は重度の障害者である。すなわち世界で約7人に1人が障害をもっているということになる。このような統計をみると障害者はマイノリティーでないにも関わらず、MDGsのゴール(目標)では障害者はターゲットに当てられてこなかった。
 国連も1948年に「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」とする世界人権宣言を採択し、この宣言の理念を具現化するため、これまで人権に関するさまざまな国際条約、宣言、決議を採択し、各種国際年の設定等を行ってきた。しかし、障害者の状況は大きく改善されたとはいえない。
 『障害に関する世界報告書』では、特に障害者の就労支援や基本的教育の支援の欠如が指摘されている。国連障害者の権利条約24条(教育)および27条(労働及び雇用)を満たす支援が不足している。こうしたことから、障害児・者をターゲットにした世界的目標を設定すべきである。
<提案>
Beyond MDGsにおいて地域別の障害者数を明らかにし、新たな分野として障害児・者の教育参加や雇用率を促進させる。MDGs達成の地域間格差がみられることからこの格差解消に向けて2015年後もMDGsを維持し、ゴール9に障害児・者支援を設定する。
<参考文献>
『障害に関する世界報告書(World Report on Disability)』2011年/WHO・世界銀行
『世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)』1948年/第3回国連総会
『障害者雇用率制度』2013年/厚生労働省/http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/04.html

2013/01/23
国立国際医療研究センター

清水 利恭
タイトル: Post-2015のglobal vision for the future world を明確にする必要性

国際社会として暗黙の合意はあろうが、明示的に提起されたglobal vision for the future world は確認されていない。Post-2015の国際的agendaを議論する際、人類社会の将来像として、このglobal visionをまず明確にする必要があろう。global vision として適切なのは例えば、to create fair, happy and healthy society with plenty of equity, justice, security and solidarity, 又はそれに近い表現である。こうしたglobal visionを国際社会全体で確認した上で、それを実現するためのobjectivesを検討するのがより理論的である。このObjectivesは現在のMDGsよりもより普遍的な内容とし、10-15年毎程度のmilestonesを設定して行けば良い。その下で、セクター毎、地域・国毎のmissionやstrategiesをより具体的に検討できるようにすべきである。これにより、国や地域ごとの特異性に応じたspecific objectives and strategiesなども決定し易くなるであろう。

2013/01/23
国立国際医療研究センター

清水 利恭
タイトル: Developmentの負の側面を検証・チェックできる仕組み作りが必要

現在でもDevelopment或いは開発に関しては、様々なquestion markが提示されているが、今後ますますそうした指摘は増していくと予想される。 400字では展開しきれないテーマと思われるので簡潔に記すが、特に新自由主義的な経済的 developmentには、それ自体、inequality, unhappiness、ill-healthなどを産み出す要素が表裏一体的に隠されており、新たなpoverty創出や格差増大に繋がっている。これらの要素を検証すると共に、そうした悪影響を排除出来うるようなmechanismsの構築がなければ、Post-2015 agendaにいかなる理想的目標を掲げようが、「絵に描いた餅」とならざるを得ないであろう。

2013/01/23
国立国際医療研究センター

清水 利恭
タイトル: 保健課題はdisease orientedから、health orientedに強くshiftしていくべき

保健セクターとしては「旧来型」保健医療観を脱却し、「未来型」保健医療観への転換を大胆に主張していくべきである。従来の保健医療開発課題は疾病対策に傾きがち、病気になった現象に対して如何に対処するかとの「対象療法」的発想・対処が中心である。如何にして「なるべく病気にならず、健康な生活を維持可能にするか?」という発想での「原因治療」、別の言葉でいえば、不健康のcause of cause であるsocial, economic and environmental determinants of healthへの対応が不足していた。もちろん、これまでに多くの提起がなされているが、現実としては遅々とした展開であり、より抜本的な取り組み開始が望まれる。「病院が繁栄」するような社会は、その根本のところで「不健康極まりない」という考えを、社会全体に広め、常識としていく必要がある。

2013/01/23
国立国際医療研究センター

清水 利恭
タイトル: 保健セクターの最重要指標として、健康寿命の増加、不健康寿命の削減を

単に寿命が延びても、その大半が不健康な期間であれば、本人が不幸なのみならず、社会全体としても活力が失われ、大きな負荷が生じることは自明である。

「健康寿命の増加」と「不健康寿命の削減」は、母子保健、感染症対策、NCD対策など、個々の分野の保健指標を統合的に反映しており、更には、水や衛生、教育、環境などsocial, economical and environmental determinants of health含めた、他の保健関連指標全体を概括的に統合、代表する指標として、最適ではないかと思料する。

2013/01/01
国立国際医療研究センター

清水 利恭
タイトル: Intersectorial cross-subsidizationの概念確立・強化

「保健」は一種の非生産部門と言うレッテルがある。しかし健全な保健政策・教育政策は、「より健康で活力があり能力に満ちた人々」の創出を保証し、その結果、他分野の活性化、生産性向上に繋がるのは明らかである。つまり生産的部門へのインフラ投資に相当する。こうした観点から、人間社会全体としてのIntersectorial cross-subsidizationのコンセプトを提起し、研究発展させ、社会常識となるようにしていく必要があると考える。保健や教育を資本主義的「産業」にしようとの考えは、そもそもsocial justiceに反する面があるという点を明確にすべきである。
そして、この概念は、目先の収入や予算に振り回されているレベルからは提起・発信されにくいであろうから、国際的な指導者レベルから強く提起されていく必要があろう。
また当然、この概念を常識的なものとするには、他セクターとの情報交換や協力が欠かせず、multi-sectorial approachが極めて重要となる。

2012/12/20
順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座

湯浅 資之
タイトル:
持続可能な開発における健康

健康は生きる目的ではなく、毎日の生活の資源である(WHOオタワ憲章)。

保健セクターにいる人たちは「健康は目的」と考えがちですが、保健セクター以外の多くの人たちはそうとは思わず、「健康は世界の持続的した発展と恒久平和のために用いられるひとつの資源である」と考えているでしょう。この観点に立って、ポストMDGsを考えるとどうなるでしょうか。

今日および今後10~20年間の喫緊の世界的な優先課題は、安定した経済成長(富を創出)、公正な社会構築(富を再分配=格差是正)、持続可能な環境保全(富を持続化)の3者を包摂した「持続可能な開発」だと思います。健康は単に目的ではなく、3者のバランスをとるために貢献する資源と捉える視点から、ポストMDGsを考えてみたいと思います(Lancet 9832; 2206-2211, 2012)。

3者のバランスを取ることは容易ではありません(トリレンマ)。しかし、健康の向上は3者をつなげる(唯一と言っていい)要となる課題設定と成りえます。健康への投資は安定した経済成長の礎となるし、健康の増進には環境の保全が欠かせないし、健康は老若男女、世代、人種、貧富を超えて万人の関心あるテーマだからです。

したがって、ポストMDGsとして「健康を入口とした持続可能な開発」を提唱したいと思います。すなわち、健康を資源として、経済成長+公平確保+環境保全を目指すという構想です。

目指す具体的数値目標は、3者毎に健康の視点から設定します。その多くは特別にデータをサンプリングする必要があるでしょう。
1.      経済成長(富を創出)
(1)       健康セクターへの官民投資総額
(2)       健康関連分野のGNP、GDP
(3)       経済成長における健康の貢献指数(新規に創出)
(4)       摂食エネルギー量、身体運動量、肥満率(NCDとの関連で)、など
2.      公平確保(富を再分配)
(1)       健康格差の指数(例えば、年収で層化した乳児死亡率など)
(2)       SDHのgap指数(富裕層上位10%と貧困層下位10%間の平均寿命比)
(3)       Universal Health Coverage、など
3.      環境保全(富を持続化)
(1)       温暖化によるハマダラ蚊生息域(あるいは温暖化とマラリア罹患率)
(2)       適切な飲料水利用率
(3)       喫煙を含む生活習慣や環境による環境慢性呼吸器疾患罹患率、など

実際には健康を前面に出した「健康を入口とした持続可能な開発」の概念は受け入れ難いでしょうから、「持続可能な開発」をメインテーマとし、その傘下の個別目標(Target)として健康の目標・指標を設定することが現実的ではないでしょうか(持続可能な開発における健康)。

2012/12/15
大阪大学大学院人間科学研究科

大谷 順子
タイトル:
ポストMDGとポストHFA

MDGが終了する2015年以降のポストMDGの取組みについて、議論が行われているのと時期を同じくして、2005年から2015年の兵庫行動枠組(HFA: Hyogo Framework for Action)が終了する2015年以後のポストHFAの取組について、HFAでの課題を踏まえて議論されている。この両方の議論から見えてくる主要な課題を連携させることが重要であろう。特に、災害分野というのは、日本の貢献とプレゼンスをあげることになると言えよう。国際保健からも、災害時の緊急援助で医療分野は最重要分野と言えよう。さらに、これは日本の外交の柱のひとつとした「人間の安全保障」にもつながる。
この10数年を振り返ると、MDGに入っていないが、国際社会のアジェンダとして重要性を増してきたものに防災があると言える。さらに、この数年の間に、それは、世界銀行や国連機関からも、貧困の問題としても位置付けられ認識されるようになった。2012年10月に東京で開催された世界銀行IMF年次総会の規模の国際舞台で防災が主要テーマとして取り上げられたのは史上初めてのことであった。Global Facility for Disaster Reduction and Recovery (GFDRR)が設立されたのは2006年である。
グローバル化する世界で、災害はその被災地域だけでなく世界各国に影響することに、世界は認識を深めた。たとえば、2011年東日本大震災による経済的影響、それに続くタイの洪水によるさらなる経済的打撃はその連鎖的影響を示した。気候変動の影響も考えられ、世界的に大雨の日数も増加しているなど、自然災害による被害額と被害者の数は増加する傾向にあることが指摘されている。災害における弱者や貧者の問題にも注目が集まるようになった。
アジアは、世界的に自然災害の多い地域であり、被害者の数も世界の半分以上を占めると推定されている。ここで、被災経験の蓄積した日本の貢献が期待される要因もある。国際機関の防災や災害復興の支援よりも、日本には海外への災害分野での支援には長い歴史があり、日本国際協力事業団(JICA)には防災1課と2課と2つもあることは、他の援助機関に類をみない。アジア開発銀行(ADB)は、2008年の中国四川大地震や、2004年のスマトラ沖地震に対応してきたが、災害専門官は3名いるが、独立した部局はない。
国連国際防災の10年(1990‐99年)に続き、2000年に設立された国連国際防災戦略(UNISDR)(ジュネーブを本部)は、持続可能な開発に不可欠な要素としての防災の重要性を高め、自然災害による被害・損失の減少、災害リスクの軽減を目指し、災害に強い国やコミュニティの構築を目的としてきた。1992年に設立された国際連合人道問題調整事務所(OCHA)では、2002年には神戸事務所が開設された。
2005年、神戸で開催された国連防災会議で、現在でも国際的な防災・減災の枠組としては唯一のものとなっている「兵庫行動枠組(HFA)」が採択された。国際社会は、HFAのもとで防災の取組を進めてきた。2015年国連防災世界会議及び「ポスト兵庫行動枠組」策定に向けた情報発信は、及び我が国のプレゼンス確保にもつながり貢献の期待されるところと言えよう。ポストHFAとポストMDGの議論、日本からの発信に一貫性を持たせて、連携することが重要であろう。

2012/11/27
一関市国保藤沢病院/自治医科大学地域医療学センター

高木 史江
タイトル:
人口高齢化 population ageing

人口高齢化は避けられないことを認識すれば、 2015年以降の課題として 、人口高齢化を外すことができないことは明らかである。
しかし、単に、考慮すべきvulnerable group が追加され、それに関する健康課題が追加されるという認識は正しくないと考える。
人口の数、年齢構成、変化率、移動 等の現状把握と将来予測の分析は、健康のみならず、環境、資源、地域開発(都市農村開発)、教育、経済・産業構造、貧困・格差、社会保障等のあらゆる課題のベースである。
望まれて誕生した生命の多くが寿命を全うできるという人類の成果が、人口高齢化(と人口減少)であるならば、そのような社会のビジョンを創造しなければならない時である。2015年以降の国際社会の開発課題として、人口高齢化とそれによって生じる主要な個別の課題について、目標という形で記述することは、意義があると思われる。
現在、日本は60歳以上の人口が30%以上を占める唯一の国であるが、2050年までには、60歳以上人口が総人口の30%以上を占める国は64カ国になると言われている。
人口高齢化の課題においては、日本が主要な役割を担ってほしい。
単に、世界で最も高齢化が進んだ国だからではない。
この人口高齢化の課題は、今まさに、日本が直面している課題であるが、包括的な取り組みにはなっていない。現在、日本国内でMDGsはあまり知られておらず、積極的に関わっていく機運の盛り上がりも乏しいが、2015年以降の国際社会の課題において、日本が牽引的な役割を担うことが、日本をも“動かす”機会であってほしいと思うからである。
2015年以降に、人口高齢化の課題に関する特定の目標と指標を設定することは可能であろうか。
政治的 に受け入れられやすい 内容と表現
各国が、アクションを起こしやすい、あるいは、アクションを起こす根拠としやすい 内容と表現
日本が、この課題でイニシアチブをとりやすい 内容と表現
とは どのような目標になるのであろうか。
数値目標にこだわらなければ、地球レベルでの課題あるいはアクションを明確化すること、それに基づいて各国において政策と事業にもり込むこと という目標であってもよいのではないか。

2012/11/23
公益財団法人結核予防会結核研究所

下内 昭
タイトル:
Beyond MDGsでも感染症対策に支援を

2015年以降の方針について、NCD, Universal Health Coverageがキーワードとして聞こえてきているが、以下の理由により感染症対策を残すべきと考える。
開発途上国でもNCDが重要になってくるのは明らかである。しかし、NCDがまず問題になるのは、所得中間層以上であるが、例えば中南米では医療供給体制として、豊かな層は自由診療、中間層は医療保険、そして貧困層は税金によっており、貧困層には政府の直接支援が必要である。途上国の医療保険制度の推進には国際的な議論の場での情報交換で十分である。Beyond MDGも、豊かな層と貧困層のギャップを健康面が縮小させるために、豊かな国が基金を拠出して、支援すべきである。そして貧困層の最も大事な健康問題:感染症、母子保健、保健システム強化に継続して最大の焦点を合わせて、技術支援および財政支援をすべきである。例えば、死因統計で、5位以内に感染症が入っておれば、その国は支援を受けるというような基準を用いることが考えられる。

2012/11/19
大阪大学大学院人間科学研究科

大谷 順子

タイトル:

中国から見るMDG

 2001年から2005年までWHO中国代表事務所に勤務していた経験による知見を踏まえて、中国から見たMDGについて述べたい。カントリーオフィスレベルでは、他の国連機関より権限の小さいWHOでは、MDGの目標の7つ(のちに8つ)のうち、目標4,5,6という3つが直接にWHOの専門である保健分野であり(実際はUNICEFやUNFPAなど他機関の管轄分野とも言えるが)、残りの目標も全てが密に健康改善に関連しているということで、ヘルスMDGの登場に喜びと期待感をもったことであった。
MDGの目標をみると、またその策定の政治的背景をみると、MDGはアフリカ・コンテクストで策定されたものであり、中国のような国では必ずしもこれば優先事項トップを占めるべき目標とは言えない。しかし、世界でこの項目の改善を目指そうというのであるから、中国も参加し、改善の必要なところに取り組むことができる一方、中国が途上国の中で優等生であり(中国はときに途上国として、時に大国として、場合によって立場を変える)、むしろ進んでいるところを見せる、共産党政府の成し遂げた業績のひとつの宣伝に使う機会にも用いることができる。MDGがコフィ・アナン国連事務総長(当時)の優先事項である以上、いろいろな活動をこれに結びつけることに価値があり、逆に利用することも可能となる。MDGのもとにエイズ対策など巨額の資金を調達する機会でもある。よって、中国は、「国連MDGに乗ってMDG達成を目指す。並行して、さらに生活習慣病(NCD)など他の課題に取り組む。」というMDGを否定するでもなくしかしMDGに偏らないアプローチを取る。
WHOはJW Lee事務局長のときに「3by5」というエイズ対策を打ち出し、巨額の資金をそちらにまわしたために、WHO本部では、NCDや精神保健など元から予算の少ない部署の予算はさらに大きく削除され、専門職員も削減された。エイズ対策が遅れていた中国でその対策が進んだことは良い点であったが、一方で、中国のように、NCDのほうが感染症よりも疾病負荷(BOD)が大きい国から見ていると、これは、アジアの保健ニーズに見合っていたのか甚だ疑問であった。
中国衛生部(保健省)とWRPOの次の2年間のプロジェクトと予算を決める会議で、ほとんどの中国政府からのプロポーザルが感染症対策であるので、中国のBODの現状にあっていない、どうしてNCDから余りださないのか聞いたところ、「WHO感染症対策の専門でそちらに予算があるが、NCDにはない。WHOは世界保健機関というが、実際は世界感染症対策機関だ。NCDは我々で対応するしかない。WHOには頼れない。」という回答であった。一方で、中国CDCはLancet誌に、中国のNCDに関する論文を特集などで掲載するなど、ロビーイング活動ともいえる動きも続けた。
2012年、ポストMDGについては、中国では外交部(外務省)が各省庁の意見を取りまとめており、衛生部は、ポストMDGのために、国民皆保険(UHC), 母子保健(MCH), NCD を提案した。中国のように政府が機能している国では、国連MDGに振り回されるより、使えるところはうまく使い、MDGに含まれない優先課題にも取り組むことができる。しかし、そうでない国では、MDGを推し進めることが利点ばかりでなく、弊害があることも留意しておくことが必要であろう。
(『国際保健政策からみた中国―政策実施の現場から―』大谷順子、九州大学出版会、2007年第9章なども参照ください。)

2012/11/16
教育協力NGOネットワーク(JNNE)
三宅 隆史
タイトル:
ポストMDGsの国際教育開発の課題

ポストMDGsの国際教育開発の課題を4点提案します。

1. 目的(権利)としての教育と手段としての教育
基礎教育(就学前、初等、前期中等、識字教育)は、基本的権利であるためそれ自体に価値がある。国家および国際社会は、基礎教育をすべての人びとに保障する義務を負っている。一方、基礎教育は貧困削減、経済成長、紛争予防、平和構築、雇用、気候変動といった人類共通の課題を解決・達成するための手段であり、前提である。言い換えれば基礎教育を普及しなければ、これらの課題は解決・達成することはできない。したがって、基礎教育はポストMDGsのあらゆる課題に関係がある。

2. 達成されてない課題の達成期限を延長すべき  
教育分野の2つのMDGsは他のMDGsに比べれば進展がみられているものの、達成されない見込みである。初等教育完全普及(MDG2)については、2010年の時点で6100万人が小学校に行っていないがこの数は2008年から改善されていない。教育におけるジェンダー格差の解消(MDG3)については、2010年の時点で68カ国において初等教育レベルで達成されておらず、96カ国で中等教育レベルで未達成である。これらの2つの未達成目標は、維持され、達成期限が延長されるべきである。

3. 追加されるべき教育課題  
追加されるべき教育課題として以下があげられる。
1)幼児教育とケア:2人のうち1人の子どもが、最貧国では6人のうち5人の子どもが、就学前教育を受けていない。
2)成人識字:7億7500万人の15歳以上の成人が非識字者である。識字能力は、雇用、貧困削減、経済成長の前提なので、これらの目標の指標とされるべきである。
3)教育の質:小学校4年生の学齢人口のうち2億5000万人が読み書きに不自由している。教員の数を増やし、生徒対教員比率を改善することが教育の質改善に不可欠である。
4)前期中等教育:初等教育が普及した国では当然のことながら前期中等教育に対する需要が増加している。5)均衡性:教育における地域間、所得間、民族間の格差を解消する必要がある。 これらの目標を現MDGsの教育分野の2つの目標に追加するために、教育分野はひとつのゴールにし、複数のターゲット、指標を設定することを提案する。

 4. 基礎的社会サービスの財政と相互責任 基礎教育・基礎保健といった基礎的社会サービスを保障するための財政に関する目標が、途上国と先進国の相互の責任事項として合意されるべきである。途上国政府は、第一に徴税システムを強化する必要がある。現在、途上国政府は全体で年間1600億ドルの税収を喪失している。一方、ODA総額は1330億ドルである(2011年)。第二に、基礎的社会サービスの予算配分の目標を設定する必要がある。教育予算にGNIの6%、政府予算の20%を配分するべきである。
先進国は、第一に援助の量と質を改善する必要がある。ODAのGNI比0.7%目標は継続されるべきである。また、ODAの10%を基礎教育に配分するという目標が掲げられるべきである。第二に、金融取引税のような国際開発のための資金動員メカニズムの推進が目標に含められるべきである。

2012/10/10
JICAケニア公衆衛生省
アドバイザー
杉下 智彦
タイトル:
ポストMDGs(保健分野)に関するケニア国内での議論

私は、現在ケニア公衆衛生省アドバイザーとして、MDGs年である2015年の前後をカバーする「第3次ケニア保健戦略計画書(2012-2017年)」の策定を支援しつつ、SWAp調整会議、各種技術委員会、CCM会議(GFATM)などに参加してきていますが、ポストMDGsを巡る議論につきまして、ケニア国内での議論の経験を基にお話ししたいと思います。特にここ1年間の議論においては、以下の3つの課題に集約されてきており、「第3次ケニア保健戦略計画書」にも優先課題として明記されています。

(1)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを目指した保健システム強化:国際的潮流のみならずここケニアにおいても、保健サービスの質の向上とアクセスの改善による健康の確保・維持・増進は、ここ1年間最も盛んに議論されてきているトピックです。特に、貧困層をターゲットにしたデマンドサイド・ファイナンシング、社会保護を目的とした健康保険制度の強化・拡大、官民連携による保健サービスと保健従事者の質と量の拡大、地方分権化に伴う保健財政能力基盤強化などが主な議論となっています。特にこれまでは「保健人材育成」が国家的課題として議論されてきましたが各種のインターベンションも始まり、現在は「保健財政」を中心に、社会保護までを含む受益者(デマンドサイド)支援努力の強化が中心課題となって来ています。

(2)リプロダクティブ・ヘルス、特に家族計画介入の強化:ケニアのみならずアフリカ全般においてMDG5(妊産婦死亡の軽減)に関しての進捗の遅れが、他のMDG4,6と比較しても顕著となってきています。特にアジアにおける保健介入の改善と比較して、家族計画政策の遅れが、特殊合計出産率(ケニア4.6、バングラデシュ2.3)の相違となって表われていることのみならず、望まない妊娠による人工中絶、出産に関する機会費用の増大、医療費・教育費増大などによる家計管理の逼迫など、母子保健サービス拡大のみではMDG5の達成は困難であることが認識されてきており、家族計画強化・拡大は特に欧米系パートナーを中心に議論されてきています。
(3)Non Communicable Diseases (NCD)対策に関する議論:アフリカにおいては、従来の感染症対策中心の保健サービス提供から、慢性疾患、特に生活習慣病(高血圧、心疾患、脳血管障害、糖尿病など)および事故・外傷・身体障害等に対するサービス強化の必要性が高まってきており、保健セクターのみならず国家的対応が求められています。これら慢性疾患の特徴として、健診による早期発見、定期的検査、長期投薬などによるサービスとコストの増大が懸念され、政府のキャパシティだけでの対応には限界があるために、慢性疾患センター等の整備、健康保険制度の整備、官民連携の強化など、従来の感染症対策以上の戦略性が必要であると認識されてきています。さらにHIV対策(Care & Treatment)に関しても慢性期の対応が求められてきており、主要感染症に対する国際的資金調達メカニズム(GFATMなど)に関する出口戦略と次世代の国家的・国際的対応が議論されてきています。

 【ケニアにおけるJICA保健セクター支援の方向性】
以上のケニア国内での議論の潮流を踏まえて、ポストMDGsを視野に入れたJICAによる保健セクター支援策として、(1)のUHC達成を目指した保健財政基盤整備、社会保障整備、リーダーシップ・マネージメント能力育成を通した行政組織強化などの分野において、ケニア政府およびパートナー・民間連携による保健システム強化を支援する方向で、保健セクター支援プログラムを集約する方向で検討が進められてきています。「保健財政」支援というこれまではあまり行ってこなかった技術協力分野ですが、保健システム強化において最重要基盤であり、どのような保健介入であっても当該国の保健財政基盤がなければ事業の継続性は保てない、という観点からも、協力を進める過程において日本側・途上国側双方の学びにつながっていければと考えています。

2012/09/29
パリ政治学院 修士課程
松戸 綾乃
タイトル:
貧困削減と精神保健

2015年以降に設定すべき開発目標として、途上地域における精神保健医療の改善を挙げる。開発途上地域において重視されてきた健康課題は主に感染症であるが、うつ病や心疾患など非伝染性の疾患への対策も急務である。特に精神障害と貧困の相関は看過されるべきでない。精神障害者はしばしば偏見、差別など社会的排除の対象となりやすく、就学及び就職の機会が限られ経済的に厳しい状況に陥りやすい。反対に、経済的に困難な状況がストレスとなり精神疾患を生じさせる場合もある。

2011年にThe Lancetに掲載された論文によれば、精神保健のプロジェクトが本人及び家族の雇用状況を改善するなど、開発途上地域における貧困削減に一定の成果を表したとの研究成果が出ている。さらなる研究が必要とされるものの、貧困削減に向けた施策として、開発途上地域における精神保健医療の強化の重要性を訴えたい。

2012/09/29
パリ政治学院 修士課程
松戸 綾乃
タイトル:
自然災害・紛争と精神保健

自然災害や紛争を経験した人々の精神疾患罹患率は高い。研究によると阪神・淡路大震災を含め1995~2004年にかけて起きたアジア太平洋地域の自然災害の後、PTSD及びうつ病の症状に該当する人が増えたという。またWHO(世界保健機関)によれば紛争を経験した人口におけるうつ病とPTSDの罹患率はそれぞれ17%、15%と、紛争を経ていない人口と比較して高い数値を示すという。

2011年の世界経済フォーラムのレポートによれば精神障害は非伝染性の疾患のなかでも社会に与える経済的負担が特に高い。さらに2004年に発表された障害調整生命年(disability adjusted life years, DALY)の疾患区分の中で、精神神経疾患が占める割合は高所得国、低中所得国共に高い。また紛争後PTSDの症状を示した人口の多くが和解プロセスに前向きでないという研究結果もあり、和解促進のためにも紛争後の精神ケアの充実が肝要である。

精神保健医療への投資は、自然災害、紛争後の復興及び社会経済開発に寄与する。東日本大震災を経た日本においても議論されるべき課題である。

2012/09/27
特定非営利活動法人国際協力NGOセンター
朝枝 優子
タイトル:
MDGの現状の改善事項とこれから

全般
 ・8項目の内容や指標などは見直しつつも、2015年以降もMDGへの取り組みやモニタリングを継続すべき
 ・継続にあたり、これまで先進国主導であった意思決定プロセスを改め、途上国とも目標値や取組内容について合意形成を行った上で協業すべき
 ・8項目いずれの取り組みもLDCについて不十分であり、地域によりばらつきがでている。LDCへの取り組みを強化すべき
MDG8
・債務免除(特にLDCへの)取組を継続すべき
・ODAのLDCへの比率が少なくこれを増額すべき
MDG7
・MDG7でカバーすべき目標及び指標の設定について全面的に改善すべき
・MDG7Aについては、SDGとの位置づけについて考慮しながら指標そのものを見直すべき
・MDG7DやMDG7Bの中の7.4、7.5等についてはMDG1との整合性が必要であり、これは統合するべきではないか
・上記以外のMDG7の指標についてはRIO+20などで提起された今後のあるべき姿とも整合して指標を見直すべき

2012/09/19
特定非営利活動法人国際協力NGOセンター
水澤 恵
タイトル:
MDGsの課題

持続可能な開発について、この 20 年間で十分な成果があったとは言い難いものの、ミレニアム開発目標(MDGs)が設定されるなど 20 年前と比べて社会開発の視点が重視されたことは評価に値する。しかしながら、MDGs については以下の 5 点の課題があると認識している。
1) 国や地域によって目標の達成度にばらつきがあるだけでなく、経済成長が続く地域においても、農村部の所得格差拡大、貧困層や若者の失業の問題に直面しており、目標の達成が困難である。
2) 人権保障の観点が十分ではなく、もっとも貧しい人たちの貧困改善に直接的なアプローチができていない。たとえば農地改革の未徹底、スラム等の居住権の未確立などの貧困層が直面する人権問題に真っ向から取り組んでいない。
3) 貧困問題と環境問題を包括的に捉え、双方の問題の解決に向けた取り組みが不十分である。たとえば自然資源に依存して生活する貧困層は、それらの権利が確立すれば、自然資源を積極的に保護するようになる。経済成長至上主義が資源の枯渇や汚損をもたらし、持続可能な社会の実現を阻んでいる点に留意すべきである。
4) ODA の GNI 比 0.7%拠出目標の達成率の低さなど日本を含めた北の政府の取り組みに課題がある。また、新興国の果たす役割も不明確である。
5) 説明責任や透明性に対する明確な目標・指標がないため、目標達成に向けた説明責任が不十分である。

2012/09/14
特定非営利活動法人国際協力NGOセンター
堀内 葵
タイトル:
貧困と環境の関係性について

"ポストMDGs策定に向けて、国連加盟国は以下のことを認識すべきである。
・貧困問題とは、単に所得が低いという問題ではなく、社会的・政治的な権利の剥奪の問題でもあること。つまり、貧困削減のための方策としては、ライツ・ベース・アプローチ(権利に基づくアプローチ)をより一層重視するべきであること。
・貧困削減の手法として、政府は貧困層の雇用保障や、土地などへの権利確立への積極的な介入、及びそのための支援を行うべきであること。
・貧困削減が実現されれば、地球環境の改善につながること。"

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
人間中心主義への疑問

"Rio+20で、「持続可能な開発において<人間が中心>であることを認識」したそうだが、これは経済成長より人間が大切という意味では正しいが、「人間中心主義」は解釈によっては、既に破綻しつつある。
Rio+20で我が国も提唱したという「グリーン経済」への移行を突き詰めていけば、地球環境、自然と人間との共存関係を見直すのは不可欠である。人類が今後も存続していくために資するようなBeyond MDGsを目指すなら、究極的には人間が「中心」ではない世界観にも配慮する必要があると思われる。"

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
貧富の格差解消へ

Goal 1に関連しては、「貧富の格差拡大をstopさせ、縮小へ」は必ずNGO等から提起されるはずである。昨年来の99%の庶民対1%の巨富層の対立構図は、「巨富」の制限への正当性を強く要求している。極めて困難な課題であるし、民主主義と矛盾する要素を含むので慎重に取り扱われるべきであろうが、何らかの解決策が模索されるべきである。

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
Goal4,5,6の再考

"かなり異論もあるとは思うが、現在のGoal 4,5は統合し、かつ、21世紀後半には大きな課題になると予想される高齢者の健康指標、及び、その他のvulnerable groupsを含め、「母子・高齢者・その他の社会的弱者の保健指標改善」とでもすべきではないだろうか? その中でTargetsを複数用意すれば良いかと思料する。

Goal 6は、現在のHIV/AIDS偏重を改め、NCD (Non-communicable Diseases)を含めることがまず求められる。更にNTD )Neglected tropical Diseases) も含めた感染症全体をより公平にtargetsとすべきである。ここでも現MDGより多くのtargetsが必要になろう。"

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
保健システムとUniversal coverage

"現Goal 4,5,6はHealthと言いながら、ややmedical oriented(?)になっているように思われ、手直しが必要と考える。
Healthに関しては、まずは有効な包括的保健システムの確立と、それへのアクセスの保証、即ち Achieve universal health coverageをGoalとして挙げるべき。既に現Goal 5、6の中でuniversal accessには触れられているが、Health service全般へのuniversal accessが保健課題Goalsの基礎となるべきである。当然の事ながら、漠然としたUniversal coverageではなく、後述するようなvulnerable groupsを優先的にcoverするようなTargets設定が重要である。また、この点では、Health system と言いながら、実際には病院中心、医師主導のMedical system & servicesにtargets内容が傾かないよう、注意が必要である。総てのSocial determinants of healthをきちんと視野に入れたHealth services へのaccessを実現していくべきである。"

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
新たなGoal案

"2015以降のMDGsとして新たに追加すべきGoalも必要と思われる。全体として、より国際的世論が高まると思われるのは、Social justiceやequityに関する課題、平和構築或いは紛争・暴力の削減、などのGoal及びTargets 設定の必要性であろう。
また、いわゆる「幸福度」(生活への満足度)をGoalに加えるべきという議論がなされるかもしれない。自分としては極めて重要と認識しているが、国際的consensusを得るには未だ機熟さずと言えるかもしれない。 "

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
目標期間など

"MDGs after 2015の国際目標の期限としては現MDGと同様15年として、2030年までの目標に考えるのが一般的であろう。しかし、今後の世界情勢の急展開の可能性を考慮したり、現MDGの反省として、短期の方がGoalやtargetsの変更は容易な点などを考慮し、2025年までの10年とすべきという意見も出るかもしれない。反対に2040~50年の目標(Vision と言うべきか?)を掲げるのも理論的には可能だし、次のMillennium(3001年)までの大きな「夢」を掲げるのも、一般の人々の関心を引き付けるには良いかもしれない。
全体として、多くのGoals、Targetsは今後も重要な課題であり、大きな変更は必要ないと思われる。2015年に達成されるであろうGoalは新たな高い目標を掲げるべきものがほとんどであるし、未達成となるGoalはTarget設定の内容、達成方法、指標などを反省しつつ、新たな目標を掲げることになろう。 "

2012/09/14
WHO アフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)
清水 利恭
タイトル:
MDGs全般

Beyond MDGsに関しては二つの対立する考え方があると思われる。

一つはいわば主流の考え方で、多くの国際機関や政府に共通していると思われる考えである。つまり、MDGs after 2015とでもいうべきもので、現MDGsの成果や課題を踏まえ、新たなGoalやtargets設定を行い、現MDGsを発展的に受け継いで行こうとするものである。
もう一つは主流とは言えないが、極端な場合にはAnti-development、Anti-MDGとも言える立場で、MDGsの成果に疑問を持ち、特にその負の側面、例えば、サブサハラ・アフリカで貧困割合は減っても貧困者数は増えている現実、先進国・途上国共に貧富の差が拡大し相対的貧困者数が増加中、等に反発する考え方である。 更に、これら二つの考え方の中間で様々な程度に、MDGsへのPros and consの考え方があろう。
基本的には一番目の考え方に沿ってBeyond MDGsを考えるべきであろうが、しかし、その場合にも、Anti-MDGsないしAnti-development 的な意見を無視せず、十分に斟酌しながら、2015年以降の人類の課題を考えて行くべきであると思う。

2012/09/13
国立国際医療研究センター
村上 仁
タイトル:
2015年の評価、総括の重要さ

MDGsのほぼ全てが、その後も継続的な取り組みを要する。2015年後も、これらの開発課題が短期的に消滅する見込みは薄い。一方、常務化すると、グローバル・イニシアチブとしての爆発力を失うため、2015年時点での評価、総括が大変重要である。成果と積み残し課題を、客観的に明示することが大事である。達成を強調したい意図でのメイクアップは排するべきである。例えばMDG5a:妊産婦死亡率の75%低減は、後発開発途上国(LDC)での現場感覚からして、まず達成されていないと思われる。が、数理モデルなどを活用し、結果の解釈に幅を持たせる可能性は常に存在する。むしろ、1カ国当たりサンプル数10万出生以上を取ってでも、きちんとした断面調査をしてはどうか。1カ国当たり1億円超を要すると推計されるが、イニシアチブの重要性を鑑みれば、大変廉価な投資ではないだろうか。政治的に受け入れやすいデータでなく、科学的に納得できるデータで評価して欲しい。

2012/09/13
村上 仁
タイトル:
高齢化社会の社会経済的活力の維持

「高齢化社会の社会経済的活力の維持」を、新しい課題として提言したい。高齢化は保健施策の成功を意味する。各年齢別死亡率が低減するからこそ、社会は高齢化する。しかし高齢化が社会の停滞と経済的衰退を招くというパターンを許してしまえば、健康はそれ自体がかけがえのない価値とはいえ、先進国のみならず、新興国、途上国も保健施策への取り組み、保健への投資に疑問を呈することになりかねない。この課題を2015年以降の国際課題に反映することは、我が国が自ら抱える国内問題を、国際的文脈で外部化するという点で意義深い。日本国内の努力が、そのままグローバル価値になる。先進国人口約13億人に加え、中国(13億)とASEAN(6億)が今後急速に高齢化することが予測され、これらを総計すると(32億)世界人口の約半数を占める。高齢化は、近未来のグローバル課題とも言える。

2012/09/13
匿名
タイトル:
人間の安全保障

Beyond MDGsの開発課題に「人間の安全保障」を含んではどうでしょうか?
今年9月の第66回国連総会において、人間の安全保障に関する決議(A/RES/66/290)が採択されました。恐怖・欠乏からの自由や尊厳を持って生きる権利が再確認され、これらの実現の為に保護とエンパワメントに資する人間中心の包括的な対応を求めることが合意されました。「人間の安全保障の促進は、ミレニアム開発目標を含む国際的な開発目標の実現に貢献すべきであることを認める」ともあり、2015年以降の開発課題を検討する上でも重要だと思われます。
健康は人間の安全保障を実現する上で必要であり、健康の為に人間の安全保障の視点に立った対応をする事も同様です。また、人間の安全保障の理念を通して、感染症アウトブレイク等の脅威からの保護や、ヘルスシステム強化やヘルスプロモーションを通した個人・地域のエンパワメントも推進できると思われます。

2012/09/12
国立国際医療研究センター
宮本 英樹
タイトル:
発展の主体性

発展の主体性は、開発途上国の当該国にあるべきはずだが、ミレニアム発展目標自体が国連主体、あるいは先進国主体のムーブメントに思えてしまう。Beyond MDGs を語る際に、次の課題・内容のことばかりが議論されているように思えるが、もっと発展の主体性を各国が高めて行けるような取り組みが必要なのではないか。

   

2012/09/12
匿名
タイトル:
このような目標は不要です

各国は自国の国家計画を立てその達成を目指しており、MDGは国際組織による屋上屋のようなものです。途上国の開発省庁での仕事を10年ほどしていますが、MDGがらみの研修・会議・報告づくりにどれだけ無駄な時間をとられていることか。現実の開発行政や意思決定が国単位で行われている以上、MDGは国際公務員と開発コンサルによる貴重な資金の浪費でしかないと思います。MDGの目標達成が絵空事であることは皆わかっているはず。こうした形での開発アプローチは破綻しており、「ポストMDG」で「国際社会として」の新たな「目標」を定めるのはナンセンスです。

2012/09/12
匿名
タイトル:
MDGsの良い点、悪い点

本事務局より、意見だしの参考となる情報を依頼され、国立国際医療研究センター内で議論した結果です。
MDGsの良い点
1.課題の明確化:全世界に共通の目標と課題が提示された。
2.活動の優先度付:重点化をはかり、活動の優先度がつけやすい。
3.数値化の効果:時間設定のある数値目標で、各国の比較ができる。
4.資源動員への効果:財政支出を促しやすく、関心や支援を集めやすい。
5.保健医療課題の改善:三大感染症の新規感染者数、妊産婦死亡数が減少した。

MDGsの悪い点
1.優先課題設定の影響:MDGsでない課題以外の活動が無視される。
2.国の主体性の喪失:ドナーや国際機関が主体で、当事国のキャパシティーに関係なく目標設定される。
3.予算の偏重化:MDGs分野に予算が偏重し易く、国の管理能力を超えた資金が流れる。
4.数値化の弊害:目標が目的化し、数値に踊らされる。
5.世界的な認知度の低さ:MDGsを知る人は少なく、共通の目標になっていない。

2012/09/04
大阪大学大学院
人間科学研究科
中村 安秀
タイトル:
子どものための発展目標

1)Developmentを、「開発」という国際協力の業界用語でまとめないほうがいい。「ミレニアム発展目標」といういい方もあるはずだ。
2)初等教育、母子保健をあわせて、「子どものための発展課題」とすればいい。基礎教育と母子保健サービスは、「社会的共通資本」であり、お互いに連動し合っているのだから。今後は、教育と保健医療の協働に関するエビデンスが必要になるだろう。

投稿者リスト

氏名:湯浅 資之

団体名:順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座

氏名:朝枝 優子

団体名:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター

氏名:高木 史江

団体名:一関市国保藤沢病院/自治医科大学地域医療学センター

氏名:水澤 恵

団体名:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター

氏名:下内 昭

団体名:公益財団法人結核予防会結核研究所

氏名:中村 安秀 
団体名:大阪大学大学院 人間科学研究科

氏名:大谷 順子

団体名:大阪大学大学院人間科学研究科

氏名:村上 仁
団体名:国立国際医療研究センター

氏名:三宅 隆史

団体名:ポストMDGsの国際教育開発の課

氏名:堀内 葵

団体名:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター

氏名:杉下 智彦

団体名:JICAケニア公衆衛生省アドバイザー

氏名:宮本 英樹
団体名:国立国際医療研究センター

氏名:松戸 綾乃

団体名:パリ政治学院 修士課程

氏名:清水 利恭
団体名:WHOアフリカ地域事務所 (国立国際医療研究センター)